応募候補作品その2『ママは元・炭むす』

応募候補作品その2『ママは元・炭むす』
応募作品2つのうち、どちらがいいか(マシか)ご意見いただけるとありがたいです。
僕のママはアイドルだった。
ママはひみつにしたがるけど現在35歳。18歳で二人組ガールズユニット『炭酸むすめ』で芸能界デビュー。メンバーの一人はリーダー『ジンジャエール』こと『小賀尾 縁』(こがお えにし)。美人でスタイル抜群のお色気担当。
そしてもう一人は、パチパチはじける元気担当『メロンソーダ』こと『早田 メロン』(そうだ メロン)。僕のママである。ちなみに僕の名前は『早田甜瓜(てんか)』。
炭酸むすめは歌はもちろん、ドラマやバラエティ、ラジオやライブでマルチに大活躍。しかし、わずか2年で電撃解散。芸能界のトップになりたいと宣言して、ソロになった縁さんに対し、ママは引退。メディアでは突然の解散に『メンバー不仲説』が囁かれた。
実はこの年の解散直後に、僕は生まれた。僕のパパは出産に立ち会うために病院へむかう途中、交通事故で亡くなった。『アイドルに恋愛は御法度』。ママはパパとの交際を隠していたことが発覚し、テレビでは『暴かれたアイドルの闇!』という特番が組まれた。ママは芸能界から完全に姿を消した。
今僕がママと住むマンションの管理人さんはおしゃべりで、よく話しかけてくる。
『お母さんが元アイドルなんて、うらやましいねえ。将来は芸能界に行くの?』
『いや・・・僕は別に・・・』
僕の家庭はごく普通だった。ママが元アイドルだったからって、裕福でもなんでもないんだ。ママは小さなジュース製造会社で働いている。残業も多いし、毎日忙しいんだ。学校から帰って冷蔵庫を開けると、
『あたためて食べてね! ママ』
と書かれたメモが夕飯に貼り付けてある。一人静かにそれを食べる。そして必ず一本メロンソーダが用意してある。会社から毎日もらえるものらしい。ボトルには
『メロメロメロンソーダで元気百倍!』
ってメモ書き。元アイドルってこういう事なの?なんだか恥ずかしい。僕はママに素直にありがとうが言えなくなっていたんだ。
次コミュへ

Comments